そういうところ!

(かなりの進歩だよね! だって、影二だよ。趣味は修行と新しい技の開発、なんて言っちゃうような影二が。その修行の最中にわたしとの約束のことを考えて気にしてくれたって……こういうのをコイビトっぽいって言うのかなあ。コイビトだって! 照れる! 部屋に戻ったらシャワー浴びるより先に電話しよ! あ、日本今何時だっけ?)
 昨日の通話を思い出すと、モーテルへ戻る足取りは自然軽くなる。慣れたサウスタウンの街を鼻歌交じりに歩きながら、ユナはにへへと口元を緩めた。
「寂しがっているかと思いきや、随分機嫌が良いようだな」
 背後から聞こえてきた声に足を止める。
「嬉しすぎて幻聴まで聞こえてきちゃった。どうしよ」
「オレでよければ話を聞くが」
「いやいいよ。脳内影二じゃなくて本物に電話するから」
「では、これならどうだ?」
 幻聴に素気なく断ってふたたび歩き出した――瞬間、目の前にすとんとなにかが落ちてきた。いや、誰か、か。鮮やかな色の忍装束をまとった彼のことを、ユナはもちろん知っていた。
「影二! 幻覚――」
 という反応は予想していたのだろう。その手で頬にぺたりと触れてくる。
「ほ、ほんもの……!」
「いつも約束を守らぬ男……と、諦められては心外だからな」
 ぼそりと呟いてそっぽを向く影二に、ユナはぴょんと飛びついて言った。
「影二のそういうところ、大好き!!」



END

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