それが家族というものならば

「ケチャップ、玉ねぎ、にんじん、鶏肉……卵はあったっけ?」
「三つ」
「じゃあ、もう一パックくらい買っといた方がいっか」
 棚から十個入りの卵をひとつ取り上げると、ユナは買い物かごの中にそっと入れた。
「それにしても、影二が買い物に付き合ってくれるなんて珍しいね」
「という言い方をされるのも心外だが。拙者とて頼まれれば荷物持ちくらいはする」
 我ながら天邪鬼な物言いもあったものだと思いつつ、それもいつものことではある。如月影二は肩を竦めると隣の棚に手を伸ばした。四百グラム入りの絹豆腐をひとつ。味噌汁にはこれ、とユナが決めていることは知っていた。
「よく分かったね?」
「まあ、その程度は」
 何度食卓を共にしたと思っているのか。あるいは、なにも考えずに出されたものを食べるだけの男だとでも思っているのか。驚いているユナからなんとなく目を逸らすと、彼女の声が追ってきた――「違うからね」
 以心伝心もここまでくれば嫌みだ。けれど、その嫌みなやり取りさえどうしようもなく笑えてきてしまって、影二は密かに肩を震わせた。






TOP