隠し味は愛情です!

「浩くん、パフェつくろ!」
 相馬万里の思い付きは、いつだって唐突なのだ。そして、いつだって心得ている。片桐が日課としている筋トレが終わるタイミングをちょうど見計らって、すっと上着と財布を差し出してくる――そんな手際のよさも含めて。流れ作業のように「ちょっとそこまで」の支度を整えられてしまえば、片桐には断る術もない。
 いや、元より断るつもりもないが。
 跳ねるように歩いていく万里の手を掴んで制しながら、近所のコンビニへ向かう。アイス、コーンフレーク、カステラ、ポッキー、ウエハース――etc.etc.
「奮発してハーゲンダッツね」
 そう言った彼女が選んだのは、ラムレーズンとストロベリー。どちらも片桐が好きな味だ。来たときと同じように道を引き返して家につけば、今度は食器棚から父親のビールジョッキを取り出して、コーンフレークとカステラをぞんざいに詰めていく。
 どうしてかそれだけは備えている――ディッシャーでアイスをすくって載せれば、ほぼ万里スペシャル。「仕上げは浩くんがやってね」とねだられるまま、ポッキーとウエハースを刺せば完成だ。キッチンを通りがかった兄の呆れた呟きが聞こえてくる。
「お前たち、五歳の頃から変わらないよな」







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