そんな目で見るな

 たった、ひとつだ。ひとつ歳が上だというだけの話でしかない、つまるところ。
 その一歳、一年をやけに遠く感じるようになったのはいつからか。ほとんど双子のように「照英」と俺の名前を読ぶときだけニコニコ笑っていた彼女が、大人びた顔でまなざしを伏せるようになったのは。
 ――夜霧。
 忌々しさを吐き出すように、従姉を呼び止める。足を止めて振り返ってきた、彼女の顔を馬狼照英はきつく睨みつけた。




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