共有するのは貴方だけでいい

「浩くん、月が綺麗ね」
 ベランダで団子をひとつ、つまみ上げながら万里がぽつりと呟いた。ああ、そうだな。なんの気もなしに頷いて――気付くのが遅れたのは、会話のはじめから月など眼中になかったからだった。月明かりにぼんやり照らされた彼女の横顔だけを、ただ見つめていた。なんとなくばつが悪くなって咳払いをひとつ。
「どっちの意味だ?」
「どっちの意味でも同じだよ」




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