てめえは気に障るとしか言わねえんだろうな。

 どういった会話の流れだったか。元チームメイトがぼそりと言った。お前は部下を見る目がないな、ビリー・カーン。その部下が誰を指しているのかすぐに気づいて、オレは酒を煽りながら苦く吐き出した。「生きるためなら自分が死にそうな瞬間でさえどうやって相手を殺そうかと考えているようなやつだぞ、あいつは」

すっかり牙を抜かれやがって!

「ビリー様、タバコの本数増えましたよね。なにか悩みでも?」 「原因知りたきゃ鏡見てこい」 「禁煙セラピー紹介しますよ」  余計な世話だ。しょうもねえことに気を回してる暇があったら、成果のひとつでも持ってきやがれ。つうか人の話を聞け。呑気丸出しの額を強めに弾いて、手のかかる部下を部屋から追い出す。 「ビリー様ヒドイ。鬼上司。独身」  なんてぼやきも――てめえ、聞こえてるからな!  

上司に惚気んじゃねえ

 ――影二のオムライスにケチャップで「I Love You」って書いたんですよ。そしたら少し鼻で笑って、わたしのオムライスに「笑止」って。そんなふうに遊んでくれるようになっただけ進歩なんですかね?

 任務の経過報告に添えられたしまりのない追記に、ビリー・カーンは顔をしかめた。上司相手に惚気けるんじゃねえよ、クソが。と、口汚く罵ってメールを削除――苛立ちがおさまった頃に、なんとなくひとつ息を吐いた。




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