隣の芝は青い

 花火を振り回している京たちに容赦なく水流を撃ちこんでいる、大人げない彼女の横顔を眺めていたらふっと胸をよぎっていくものがあったのだ。それはたとえば嫉妬、あるいは優越感のような、でなければ少し先の未来に対する期待ということもありえたかもしれない。感情の正体は敢えて探らず、名を呼んだ。
「ユナ」
「なあに、影二」
 その瞬間にはもう遊んでいたことも忘れたように、引き返してくる――とはいえ高校生たちも、ユナひとりが離れたところで気に留める様子はない。何事もなかったように花火を続けている、そのさまを横目に眺めながら影二はきょとんとしている彼女の手を強く引いた。え、なに。どうしたの。問いかけごと唇を吸って、答える。
「お前があまりに楽しそうな顔をするから」
 比べたくなってしまったのだ。





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