どちらの願望なのか

「影二、幸せになろうね」

 と、彼女が言った。
 体の曲線にぴたりと張りついて裾へ向けて流れ広がっていくような純白のドレスが美しい。なにもかも分かったような笑顔で左手を差し出してきた彼女に、おのれはどんなまなざしを向けていただろうか。その手を取り、ほっそりとした薬指に誓いを立てた銀の輪をはめようとしたところで――
 目を覚ました。
 ハッと気付いて隣を見る。まだ暗い。静かな部屋の中には、もう一人分の小さな寝息が響いている。そのことに安堵しながら、如月影二は額を押さえた。
(馬鹿げて……)
 毒づきかけてかぶりを振る。それを認めてしまうならば、どうしようもなく幸福な夢だった。




TOP