キーパーソンは忍者

 溜息をひとつ。さっきまで晴れてた空は買い物をしてる間にみるみる不穏に色を変えて、今は大粒の雨を降らせてる。
(傘、持って来なかったんだよナー)
 電気屋さんの軒先で一休みしながら、荷物の中にタオルを探す。こういうときに限って持ってない。ツイてない。溜息、ふたつめ。
「今日の乙女座のキーパーソンは――」
 ショーウィンドウに飾られたテレビからは占いが流れてくるけど、わたし自分の星座知らないし。なんて不貞腐れてみっつめの溜息を吐き出そうとしたとき、
「まったく、傘も持たずに出掛けるとは」
 不意に、目の前に影が落ちた。
「えーじ」
「天気管のひとつでも持っておけ、馬鹿者」
 不機嫌そうに言いながら、ぐいと手を引いて傘に入れてくれるんだから。その瞬間に、溜息なんて全部どっかいっちゃった。
「わたし、乙女座なのかも」
「は?」
 またわけの分からんことをって言いたげな影二にちょっと笑い返して、手を握り返す。
「あのね、さっき占いで……」




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