変態男と猟奇女

 まばたきする彼女を、見ていた。長い睫毛が目の下に翳りを落として表情を陰鬱にする、そのさまを。
「綺麗だなあ、バイスちゃん」
 うっとりと呟く俺に、彼女はいっそう顔を引き攣らせながら言った。
「鬱陶しいんだよ」
「知ってる」
「この瞬間も首をかき切ってやりたいくらい」
「君が望むなら、すぐにでも」
 後じさる彼女の手をついと取って、爪の先に口付ける。おびただしい量の血を吸ってなお――あるいは、真摯に残酷であればこそこんなにも甘いのか。
「この世でもっとも誠実な君。確かな君」
 酷く胸の詰まる心地で見上げると、彼女はどうしてか途方にくれた顔をした。




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