ハードモード

「これぞ悪役の末路って感じだよねえ」
 のんびり呟く女を、如月影二はじろりと睨んだ。 司法の手が入る前にギースタワーから離脱できたのはよかったものの、重症のビリーはまだ目を覚まさない。影二自身も立っているのがようやくで、ユナに引きずられてどうにかここまで逃げてきた。ギースが取引に使わせていた倉庫のひとつだ。そのギース・ハワード本人はタワーの最上階から飛び降りて、いまだ生死不明と――あとから合流したハワード・コネクションの構成員たちから聞いた。
「主人を捨てて逃げたと言えば、ビリーのやつがうるさいだろうに」
「でも、探してる場合でもなかったよ。こっちは死にそな男二人を抱えてさ。ビリー様のことだってほんとは病院連れていってあげたいんだけど、 町の様子見た感じ出てったらあっという間に捕まっちゃうでしょ。この状況でギース様も、なんて無茶振りすぎるよ。すっごい恨まれたんだとして も……優先順位は付けるよ、わたしは」
 眠るビリーの上にやや憂鬱な視線を投げて、そっと溜息を零す。そんな彼女に、影二はふと気付いて訊ねた。
「ならば何故、拙者を助けた」
「言ったじゃん。優先順位は付けるって」




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