遠回しすぎる

 ユナは、よく怪我をする。どうということのない軽い打ち身から、命に関わるような大怪我まで様々に。ある人は不運なのだと言うし、またある人は――それでも毎度のこと生き延びているのだから幸運なのだと言う。
 どちらの言い分も確かにその通りであると、如月影二は怪我をしたユナの手当てをしてやりながら、あるいは病院に付き添ってやりながら、しばしば思うのだった。

「いつか、ころりと死にそうだ。お前は」
 着替えるユナを眺めながら、影二はぽつりと呟いた。無防備な背中に、堅気の女よりは多少筋肉の付いた腕に、そうと意識しなければ分からない 程度の古傷がいくつも見て取れる。
「……あんま見ないでよ」
 そう大きな声を出したつもりもなかったが、振り返ってきた彼女はばつの悪そうな顔で素早く新しいシャツに袖を通した。
「まあ、こういう仕事をしてたらろくな死に方はしないんだろうなって覚悟はしてる」
「足を洗おうとは思わんのか」
「みんな簡単に言うけどさ、まともな職歴どころか戸籍すらないんだからね。わたし」
「ひとつ、就職先を斡旋してやれぬこともない」
 唇を尖らせるユナにふらりと近づいて、薬指に触れてやる。彼女はぽかんと口を開けた。




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