学パロ(2)

「ユナ・ナンシィ・オーエン。校則違反だぞ」
 大きく開いたシャツの襟元から覗く銀色の輝きを目に止め、ビリーはすれ違いざまにユナを呼び止めた。癖の強い灰色の髪を揺らしながら、彼女が振り返ってくる。
「見逃してよ、ビリー先生。見えないようにして おくから」
「だーめだ。ガキが色気付いてんじゃねえ」
 顔の前で両手を合わせる彼女の首から、するすると銀の鎖をたぐり寄せる。先にはシンプルな指 輪がひとつ。どこかで見たことあるなと思いながら日に透かすようにして眺めていると、背後から伸びてきた手がそれをさらっていった。
 如月影二だ。彼は指輪をシャツの胸ポケットに突っ込むと、ユナをじろりと睨んだ。
「拙者が預かっておこう。帰りのHRが終わったら指導室へ取りに来い、ユナ」
「はーい、影二センセ」
「それから、シャツのボタンは上まで留めておけ と言ったはずだが?」
「えへへ、ごめんなさーい」
 ユナはあっさりと引き下がって、教室へ戻っていく。その後ろ姿と左手を不自然な角度で隠す影二になんとなく察するものがあって、ビリーは半眼で彼を見つめた。
「おい」
「授業の準備をせねば」
「おい、如月。待て。まさかアレか」
「なんの話か分からんな」
「隠すのも下手なら、とぼけ方も下手か。オレの生徒に手を出しやがって、くそが」




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